2025年新年のご挨拶 寺内学長
新年を迎えて
新年あけましておめでとうございます。この1年が皆様にとって幸多い年になることを心より祈念いたします。ご存知のように、高千穂大学の創立者である川田鐵彌先生は、高千穂学園のルーツとなる高千穂尋常高等小学校を1903(明治36)年に設立し、高千穂学園は昨年度創立120周年を迎えました。そして、現在の高千穂大学の前身である高千穂高等商業学校を1914(大正3)年に設立し、ついに、今年度、高千穂大学も設立110年を迎えました。
高千穂学園は120年を迎える歴史の中で、常に人格教育を重視し、実学を通して、社会に貢献できる人材の育成に努めてまいりました。長い歴史と伝統を持つ高千穂学園の一員として皆さんが新年を迎えるにあたり、今年も川田先生が理想にされていた人間教育についてお話ししたいと思います。川田先生は、常に教育は真の人間教育でなければならないと考えられておられました。その川田先生が示された理想の人間像について、蒲沢章夫さん(小・旧中・高商29回)というOBの方が『高千穂学園八十周年記念誌』の28頁に「高千穂学園の思い出」として、以下のように述懐されています。
一、「君には忠義、親には孝行、兄弟仲良く、人には親切、自分には誠。」の五訓を基盤に、強制しない、余裕のある人造り教育であったと感銘深いものがあります。時代的差はあっても人間造り(人間性)そのものの成果には違い無いと考えています。・・・中略・・・川田鐵彌校長の新制大学設置の提言にもある如く、穏健中正な国民的教養の向上を目的とした学園であることを望む。人間造りは「民主主義の下、互いの人格を重んじ自由を尊び、明朗清新な平和愛好の人士の育成」の意です。
ここで目指されている「人造り」の理想は、本学の学風の目標である「偏らない自由人」「気概ある常識人」「平和的国際人」にも通じるものです。世界情勢が目まぐるしく変化するなか、まさに時代を超えたメッセージとなっています。そして、ここで語られている蒲沢さんとの思いというのは、私たちが常に目指している高千穂教育の源流そのものなのであり、川田先生が強調されてきた人間教育は高千穂大学の教育において脈々と受け継がれてきた伝統そのものであると言えるでしょう。新しい年を迎えた今、改めて人間教育ということを再認識していただければ幸いです。
こうして変わらないものがある一方で、大きく変化しているものがあります。その背景にはテクノロジーの目覚ましい進化があります。2020年からの新型コロナウイルス感染症を契機に、遠隔授業が高校や大学などの教育現場でも手軽に行われるようになりました。その結果、時空を超えたコミュニケーションが迅速(瞬時)に行われるようになり、情報交換や対話はスピード感が増しました。皆さんも場所にとらわれず、自分のペースで学ぶことが可能になり、様々な情報へのアクセスも容易になりました。さらにAIの発達はどこまでいくのかまだ予想がつきません。一方で、劇的な人口減少という社会的問題があります。まさに、激動する時代の真っただ中に皆さんはいると言っても過言ではありません。
どのような社会になろうともまさに高千穂大学が伝統として目指す学びの本質(人間教育)は変わるものではありません。しかし、環境に応じて変化を積極的に受け入れ、様々な手法を取り入れていくという懐の深さもとても大切なのです。両者のバランスをとりながら、時代や社会の変化に対応し、新しいものを積極的に取り入れて、活用し、できることをひとつずつ増やしていってください。皆さんにとって実りの多い1年になることを心から願っております。